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2009.09.18 拝啓―
ニューヨークでウッドベースをはじめて1年以上経ちました。
なかなかうまくならないもので、月に2回先生に習っています。

ウッドベースの先生はこの前の記事でもご紹介しましたが、
見た目チャラチャラで“ヨーメーン”を連発するウィルという名前の先生です。

この日と見た目は長髪でいかにもだらしないTシャツを来てるんですが
目が覚めるように美しいクラシックの曲を弓で弾いたり、
どっしりとした泥臭いジャズをブンブン弾いたりとすごいのであります。

その練習方法もなかなかぶっとんでいて、
僕が左手でドレミファソと音階を弾いていたら

“ヨーメーン、これは弾けるか~い”

といって左手の人差し指だけでドレミファソラシドを弾きます。

普通は左手の人差し指と中指と小指で
(ウッドベースでは普通左手の薬指は使いません)
ドレミファソ・・・と弾くものですから、

ちょっとナメんじゃないと、なかば怒りながら
人差し指だけでドレミファとやりましたっ!

って、意外に難しいっ。

普段、人差し指と中指と小指で弾いているのを
人差し指だけで弾くのは難しい!

ウッドベースはバイオリンと同じで
ギターのようなフレットがありません。
チェロのように弓で弾くと
音程の悪さが目立ちます。

“ヨーメーン、なかなか難しいだろっ。毎日人差し指だけで弾くんだっ”

馬鹿にされたみたいですが、
それから2週間ほど左手の人差し指だけで弾いてみました。

とにかく正確な音程できれいな音色になることだけに集中して。

するとどうでしょう、人差し指だけを使うという風に
動作をできるだけシンプルにすると、
音程だけに集中できます。

すると、どんどん音程がよくなって来ます。

そうしたら不思議なことに他の指を使っても音程がよくなるのです。
なるほど、こんな単純なことでこんなに音程がよくなるのかっ。

“ヨーメーン、いい音になったろっ?”

彼は見抜いていたのでした。
僕が複雑な動きをするときに音程をごまかしているのを。

そんなヨーメーン先生ですが、
クラシックの練習ばかりになっていたので急に

“これからはジャズをやろうぜ、メーン”

と言い出しました。

そこで課題曲になったのが“Dear old Stockholm”です。
しんみりとした叙情的なメロディ。マイルス・デイビスの演奏が有名ですね。



この曲、大学時代にもバンドでやったことがあるのですが
思い出深い曲です。

単純に訳せば、

“親愛なる旧きストックホルムよ”

という感じでしょうか。
うまく言葉が見つかりません。

手紙の最初につける“Dear”という単語です。
“拝啓”と訳しましょうか。

9.11事件のあった年、僕はスウェーデンにいました。
ヨーテボリという街の大学に留学していたのです。

その年は留学生が多く、臨時の学生寮になっていた
ぼろいホテルでカバンを盗まれるという事件の
被害者になってしまいました。

カバンにはパスポートや免許書、パソコンなど
あらゆる貴重品が入っており結局犯人は見つからず。

失意のままにカード等を全部止めて
首都のストックホルムにある日本大使館で
パスポートを再発行しました。

9.11事件で警戒態勢にあった米国大使館も近く
ライフルを持って武装した警備員に尋問されたりもしました。

大使館で作った臨時のパスポートだったので
本人の写真のところがラミネート加工ではなく、
いかにもスピード写真をのりで貼ったみたいな
パスポートだったので
それから国境を越えるたびに入国審査官にとめられる有様でした。

とまあ、ロクなことのなかったストックホルムですが、
なんだか僕の中ではセピア色の記憶の中で
なぜかそのブルーな気持ちと、
この街の郷愁をそそる街の色や匂いが
重なって悲しいような懐かしいような
何ともいえないような気持ちになります。

この“Dear old Stockholm”という曲は、
かなり複雑な和音のコードで編曲されています。

曲を構成している一つ一つのコード(和音)が
全体としては少し暗い短調なのですが、
要所要所が単純な暗いマイナーではなく、
マイナーに明るいメジャーを混ぜたような
はっきりしない感じなっています。

それがこの曲独自の雰囲気を作っていて
運河沿いを風が吹きすさぶ寒くて暗い雪の街の中にありながら、
暖かな北欧家具に囲まれた暖炉のある明るい家で過ごす
ストックホルムの人々を思い起こさせるような気がします。

“あーぁ、これからどうして暮らすかぁ”
と運河の橋のたもとで冷たい風を頬に感じながら
ため息をついていました。

帰路を足早に目指す人と、帰る家のない異邦人。

あのストックホルムをニューヨークで思い出しています。


あれからどうなったのか。

“Dear old Stockholm”

に続く、

ストックホルムに宛てた手紙の言葉を
考えなくてはいけません。



手紙とは何か。探し続ける駐在員にあたたかい応援をっ。



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